大判例

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松山地方裁判所 平成7年(行ウ)7号 判決

原告

奥村悦夫

(ほか三八名)

被告<1>

愛媛県

右代表者知事

伊賀貞雪

右訴訟代理人弁護士

白石誠

右指定代理人

岡本靖

宇佐美伸次

長谷川寿

八束通和

被告<2>

愛媛県議会

右代表者議長

小田慶孝

右訴訟代理人弁護士

白石誠

右指定代理人

岡本靖

宇佐美伸次

林知省

清家資作

被告<3>

森高康行

(ほか四二名)

右被告<3>訴訟代理人弁護士

白石誠

事実及び理由

三 当裁判所の判断

1  別紙請求の趣旨目録第1項の訴えについて

(一)  被告愛媛県及び被告愛媛県議会議員に対する訴えについて

まず、右訴えが、行政事件訴訟法三条一項に基づく抗告訴訟として提起されたとすると、抗告訴訟においては、当該処分を行った行政庁が被告とされるべきであり、それ以外の者を被告とする訴えは、被告適格を欠く不適法なものとなる。ところが、本件決議を行ったのは被告愛媛県議会であり、行政庁にあたるのは被告愛媛県議会であるから、被告愛媛県及び被告愛媛県議会議員に対する訴えは、被告適格を欠く不適法なものであって、却下を免れない。

次に、右訴えが、行政事件訴訟法五条に基づく民衆訴訟として提起されたとすると、当該訴訟は、法律の定めがある場合に限り、法律に定められた者が提起できるものであり(同法四二条)、県議会の議決に対し、単にその効力を争う趣旨の訴えを認めた法律は存しないから、右訴えは不適法であって、これ又却下を免れない。

次に、右訴えが、民事訴訟の確認訴訟として提起されたとしても、本件決議は、何ら個人の具体的権利義務ないし法律関係に影響を及ぼすものではなく、本件決議が原告らの具体的権利義務ないし法律上の地位に対する危険、不安を生じさせることはない。したがって、右訴えは確認の利益を欠き不適法であって、これ又却下を免れない。

(二)  被告愛媛県議会に対する訴えについて

右訴えは、当庁平成七年(行ウ)第六号県議会決議の無効・違憲確認請求事件の請求の趣旨第(一)項と、その当事者、請求の趣旨とも同じくし、全く同一の訴えである。したがって、右訴えは、重複起訴を禁止した行政事件訴訟法七条、民事訴訟法二三一条に違反する違法な訴えであって、これ又却下を免れない。

2  別紙請求の趣旨目録第2項の訴えについて

(一)  被告愛媛県及び被告愛媛県議会議員に対する訴えについて

右訴えは、本件決議の違憲確認を求めるものである。

ところで、裁判所が司法権の内容として審判しうる対象は、裁判所法三条一項にいう「法律上の争訟」に限定されるのであり、この「法律上の争訟」とは、(1)当事者間の具体的権利義務ないし法律関係の存否についての紛争であって、かつ、(2)当該紛争が、法令の解釈適用によって終局的に解決されるものを指す。

したがって、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ、裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所は、このような具体的事件を離れて、一般的・抽象的に、法律命令等の違憲・合憲性を判断する権限を有するものではない。

そうすると、前記訴えのように、個人の具体的権利義務に関わらない本件決議の一般的・抽象的な違憲確認を求める訴えは、法律上の争訟に該当しないことが明らかであり、右訴えも又不適法であって、却下を免れない。

(二)  被告愛媛県議会に対する訴えについて

右訴えは、当庁平成七年(行ウ)第六号県議会決議の無効・違憲確認請求事件の請求の趣旨第(二)項と、その当事者、請求の趣旨とも同じくし、全く同一の訴えである。したがって、右訴えは、重複起訴を禁止した行政事件訴訟法七条、民事訴訟法二三一条に違反する違法な訴えであって、これ又却下を免れない。

3  別紙請求の趣旨目録第3項の訴えについて

(一)  同前段(被告愛媛県議会に対する訴え)について

右訴えは、原告らが本件決議により精神的苦痛を被ったとして、被告愛媛県議会に対し、原告一名につき慰謝料一〇円の支払を求めるものである。しかし、被告愛媛県議会は愛媛県の機関に過ぎず、実体法上の権利義務の主体とはなりえないものである。したがって、被告愛媛県議会は民事訴訟の当事者能力を有しないものであり、右訴えは、被告適格を欠く者に対する不適法な訴えであって、これ又却下を免れない。

(二)  同後段(被告愛媛県議会議員に対する請求)について

原告らは、本件決議に賛成の表決をした被告愛媛県議会議員に対しても、原告一名につき慰謝料一〇円の支払を求めている。

しかし、愛媛県議会における本件決議案の表決に際し、議員が賛成起立して、自己の議決権を行使することは、公務員である県議会議員としての職務行為にほかならず、原告らは、この公務員の職務行為に基づいて損害を被ったと主張して、損害賠償の請求をしているものであるところ、公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うにつき故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には、当該公務員が所属する国又は地方公共団体が、その被害者に対して賠償の責に任じ、公務員個人はその責を負わないものと解する(最高裁昭和五三年一〇月二〇日判決・民集三二巻七号一三六七頁参照)。

したがって、原告らの請求は理由がない。

4  別紙請求の趣旨目録第4項の訴えについて

右訴えは、原告愛媛県に対し、戦没者追悼のための儀式への県費支出の差止めを求めるものである。

右訴えが、地方自治法二四二条の二第一項一号の住民訴訟として提起されたとすると、右住民訴訟は、右条項の規定により、同法二四二条の住民監査請求を経ることが出訴要件とされている。しかるに、本件においては、原告らが右監査請求を経た事実は認められず、右訴えは、出訴要件を満たさない不適法な訴えであって、却下を免れない。また、同法二四二条の二第一項第一号所定の差止請求の被告は、当該行為を差し止める権限をもつ執行機関又は職員でなければならないところ、被告愛媛県は県費支出を差し止める権限をもつ執行機関又は職員ではないから、被告適格を有しておらず、この点からも右訴えは不適法であって、却下を免れない。

次に、右訴えが、行政事件訴訟法上の無名抗告訴訟として提起されたものであるならば、既述したように、愛媛県は県費支出を行う行政庁ではないから、被告適格を欠く者に対する訴えとして不適法である。また、戦没者追悼のための儀式について県費が支出されたとしても、それにより、住民の具体的な権利義務に何らの影響を及ぼすものではないから、県費支出行為は行政処分性を有さず、抗告訴訟の対象とはなり得ない。したがって、右訴えはいずれにしろ不適法却下を免れない。

さらに、右訴えが、行政事件訴訟法四条後段の公法上の法律関係に関する当事者訴訟として提起されたものとしても、原告らが被告愛媛県に対し、公法上の請求権として、県費の支出差止めを求める権利などは有しないから、いずれにしろ原告らの請求は理由がない。

(裁判長裁判官 紙浦健二 裁判官 髙橋正 橋本佳多子)

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